反吐

遠くから近くから射殺したい

送りようのない手紙

ぼくは眠気を感じながら、使わずじまいのレポート用紙を破いて鉛筆を持った。ぼくはあの人に手紙を書こうと思った、送りようのない手紙を。

 

あなたが死んだら悲しむ人が4000人もいるのですね、ぼくなんて0人ですよ。ぜろ。人生が決定されちゃっていたんです、うまれたときから、ぼくらは。もうどうしようもありません。あなたはまぶしすぎますし、うらやましすぎてなりません。それにくらべて自分はなんなのでしょう。あなたとくらべて、なにが劣っていたのでしょう。こわすぎます。恐ろしすぎる。生存の根本的なところでつまずいてしまいました。それはある種いちばんの不幸だといえるかもしれません。

 

ぼくはそこまで書くと、机に突っ伏して貧乏揺すりをした。眠い。だが不安と恐慌で眠れる気がしない。どうせこのままのっぺりとした無価値な人生なら、31歳くらいまでに死にたい。

ぼくはあの純文学作家が中年になってから言った「自分がこの年まで生きているとは思ってもみなかった」という言葉を思い出した。
かれは作家となって生きる手応えというものを掴むことに成功したのだろう。では自分もそれに成功すれば生き続けることを選ぶ? しかし何をもって成功したといえるのか? ともかくかれは、それを求めて書き続けたに違いない。

 

わかっている、ぼくは何も劣っていない、ただ、ひとりであるというだけだ。生きはじめた場所で生きはじめたのは偶然だし、必然的にそこのやりかたで動いてきた。その結果なのだ。ほら、何も劣ってなんかいない。
だからやることはひとつだ。それは非難されるようなものではない、断じて。自分のためにやる。それだけだ。


そして、あなたは天使かもしれない、しかしぼくはあなたをそう名付けることはしない。ぼくはたまに麻痺してしまうから。


消えない。さっきから焦燥に内面を席巻されているのです、これには終わりが来るのか。そしてそれは狂気や含羞に様変わりして渦巻く。それすら汲み取ってくれる場所はあるのか、ぼくはそんな暗渠を探しているのです。

 

あなたにはたぶん関係ないことの色々ですが、あなたにもあるいはわかってくれるということがあるかもしれないとかんがえたから、書いたのです。

 

ぼくは鉛筆を置いた。気付いたら夜中の3時をまわっていた。